アルミ溶接は難しいと言われていますが、ポイントを理解していれば
比較的容易に来る事を記事にまとめました。
実体験をもとに、基礎を解説していきます。


アルミ溶接に25年携わった私がわかりやすく解説した内容です。
最後まで読んで頂ければ、アルミ溶接がアルミの性質や溶接方法が理解でき
上達すると思います。

1)アルミ溶接のコツ

・熱伝導率(熱の伝わり)

・アルミニュウムの融点(アルミは,すぐ溶けてしまう)

・ひずみが大きい

・酸化被膜が作られ溶接を妨げる

2)アルミ溶接機

・交流TIG溶接機(ダイヘン)

・交流TIG溶接機(パナソニック)

3)溶接用ガス

・アルゴンガス

・用途

4)アルミ溶接棒の種類

・溶接棒の規格

1)アルミ溶接のコツ

熱電動率


 アルミ溶接を行う前に理解しておかなければいけない事があります。
 アルミニュウムは鉄やステンレスに比べ、熱の伝わりが2倍以上と
 言われています。
 熱の伝わりが早いため、最初は熱が母材にすぐ広がります。
 そのためなかなか溶けません。一度熱が母材に伝わってしまうと
 そこからは溶接スピードを上げていかなくては
 同じ幅で同じ高さの溶接ができなくなってしまいます。
 溶接を実施する際、気を付ける点は、母材からタングステン電極の
 距離を一定に保ち進行方向に対し、タングステンが先行する様に
 角度を付けて溶接を行います。
 角度の基本は45°でノズルからタングステンを4ミリ~5ミリに設定し
 角度は崩さず溶接を行います。
 溶接部分をしっかり目で見て溶け具合を確認しながら溶接していきます。
 その時溶接のビードの両側が白く見えます。その白い部分を同じ幅になるように
 トーチを動かして行くと比較的幅がそろったビードができ、綺麗に
 溶接する事ができます。

アルミニュウムの融点

 アルミニュウムの融点(個体が液体になり始める温度)が660℃に対し
 鉄は1540℃/ステンレスは1400℃です。
 低い温度で液体になり始めるため、母材がすぐ溶け落ちてしまいます。
 溶け始めたら素早く溶接を行う必要があります。
 素早く溶接するには、溶接棒の手送りを、素早く適格な場所に安定して
 送り続けなければいけません。
 溶接棒を使い溶接棒の手送りのエアー練習をし、自在に溶接棒を送れる様に
 練習してください。
 最初のうちは、母材が溶け始めて溶融地(溶けた池)が見えたら
 溶接棒を適量投入し、投入したら3ミリ~4ミリくらいトーチを前進させ
 また溶融地が出来たら、溶接棒を投入し3ミリ~4ミリくらい全身して、と言った
 具合に溶融地 溶接棒投入 トーチ前進の順番に繰り返して溶接してみて
 ください。最初はスムーズにいきませんが、慣れてくれば連続してトーチを前進
 させる事が出来る様になります。

ひずみが大きい

 アルミニュウムは鉄に比べて、ひずみが3倍近いと言われています。
 アルミニュウムの母材を、局部的に高温で溶かすため、熱が加わると
 膨張し、冷える時に元に戻ろうとします。
 局部的に溶かすため、均一に元に戻らず溶かした部分だけが膨張し
 元に戻ろうとします。
 従って、溶かしていない部分とおなじには戻りません。
 そこからひずみが発生して行きます。
 ひずみを極力少なくするために、拘束して溶接する事をお勧めします。
 ショコマンやジグで動かない様に拘束し、溶接を実施すると比較的ひずみは
 少なくなります。
 ひずみは最終的に、傷がつかない様にプラチックハンマー等で、たたきひずみ
 とっていきます。

 酸化被膜


 アルミの表面は、酸化被膜でおおわれています。
 アルミニュウムを空気中に放置すると、酸化被膜が形成されます。
 酸化被膜の融点は2000℃と、とても高温でないと酸化被膜をやぶる事は
 できないため、酸化被膜を除去しなければ、上手く溶接できません。
 ステンレスワイヤーブラシ等で、溶接面を磨き溶接を行うとうまくいきます。
 なおアルミ溶接には、汚れやチリほこり油があると、うまく溶接する事が
 出来ませんので溶接直前に、有機溶剤等で洗浄し綺麗な状態で溶接を
 実施してください。

2)アルミ溶接機

画像はイメージ画像です。
出典:ダイヘン溶接機 https://www.daihen.co.jp/products/welder/faq/operation/q8.html


ダイヘン溶接機 

 WB-A350P 交流TIG溶接機
 交流周波数が500Hzで、深い溶け込みが得られる。
 アークの集中性が良ため入熱が集中する亊により、一瞬で溶融地が形成できる。

Panasonic 溶接機

 WX4シリーズYC300WX4 ツインインバーター制御交流/直流TIG溶接機
 MIX TIG溶接
 薄板から厚板様々な形状のワークに対応
 交流/直流を交互に4出力ができるため深い溶け込みが得られる。
 交流ソフトTIG用溶接 柔らかいアークでアーク音が静か

画像はイメージ画像です。
画像はイメージ画像です。
出典:溶接機Panasonic https://www.monotaro.com/p/1161/1495/

3)溶接用ガス(アルゴンガス)

アルゴンガス


 アルゴンガスで溶接溶融地をシールドし酸素を遮断して溶接を行います。
 アルゴンは空気中に約0.9%しか存在しません。色は無色、無味、無臭で、不活性の    
 気体です。
 他の物質と反応を起こさない科学的に安定したガスです。

用途

 各種溶接のシールドガス(ステンレス・アルミ・銅)
 半導体シリコン製造
 分析器(キャリアガス)


 
 
4) アルミ溶接棒規格


 アルミ溶接棒と言っても種類がたくさんあります。
 母材の材質によって溶接棒の選定を適切に行わなくては、欠陥の原因になるため
 溶接棒の選定はアルミ溶接を行う上で重要になってきます。
 
溶接棒規格         溶接棒サイズ
 A1070-BY         軽: 1.2 1.6 2.0 3.2 4.0 5.0ミリ
A1100-BY         長さ:1000ミリ
A1200-BY          
A4043-BY
A4047-BY
A5356-BY
A5556-BY
A5183-BY

以上アルミ溶接のポイント基礎の説明になります。
ポイントを押さえ溶接にチャレンジすれば必ず、上手な溶接が
できる様になるはずです。